「真理のみ」 (原題 「THE TRUTH IS」)

 

~SRI H.W.L.POONJA

崎山綾子翻訳

 

 

 

第9章 世界は幻想 ☆Part5-b

 

(サイト管理者より・・・・画面構成の都合上、章全体を複数ページに分割して掲載します。用語解説は各ページ末に収録)

☆Part1☆Part2☆Part3☆Part4

 

 

第9章は全体が長大なので、小見出しごとに☆Part分割したファイルを更に、a,b,c...と細分割して掲載します。

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前ページ(Part5-a)からの続き・・・・

 

 

カルマ:幻想の筋書

 

 

 

 

Q:不正直な人が栄えて、正直な人が苦しんでいるのはなぜですか? 正直な人が罰せられて、不正直な人が報酬を受け取るのはなぜですか? これが私が完全に降伏できない理由です。
  

 

 

 それは本当だ。罪のない人が苦しんで、不正直な人が公衆を騙して栄える。

 ラバナを見てごらん。彼はインドのいたる所で正義を踏みにじり、美女を盗んでは彼のハーレムへ連れて行った。その結果、彼は彼の宮殿や町をゴールドで造ることができた。

 彼は一切誰のこともかまわず、すべての人を困らせた。ラーマの妻でさえ誘拐してしまった。ラーマは王国から追放されてすでに苦しんでいた。ラーマは神であるが、彼は苦しんでいた。

 彼の名前を口にするだけで二度と生まれては来ないといわれているが、彼自身は多くの問題を抱えていて、更にラバナは彼に惨めさを付け加えた。

 ラーマは父親の妻の一人の策略で追放された。彼の父は王で、次の王としてのラーマの戴冠式のときに、一番若いクイーンがラーマの父によって以前に約束された恩恵を願い出た。

 その願い事は、ラーマを国から追放して彼女の息子を王位につけることであった。王はそれに同意せざるをえなかった。ラーマを森に追放してすぐ、彼はラーマとの別離を嘆いて死んで行った。この王の名前はダサラタで、このために国中が苦しんだ。

 しかし最後には何が起こったか見てごらん。ラバナは殺され、今でも私達はラーマの名前を唱えている。彼は7600年前にこの州に住んでいた。ここからそんなに遠くない所だ。

 多くの聖人がその人生の内で多くのトラブルを抱えていた。
  


 

Q:しかし時々、非常な苦しみが罪のない傍観者に架せられました。
  

 

 何と罪のない傍観者として現れるとは!
  


 

Q:それはどういう意味ですか? そのような苦しみはでたらめですか、それとも今世のカルマのためですか? 悟った人はどのようにそのようなカルマの法の表現を見ているのですか?


 

 この質問は総体的な意識と関係している。もし私がそれは今世のカルマだと話すとそれは素直に信じられることだ。私は二通りに説明しよう。

 

 一つは、あなたがすることは何でも来世のカルマになる。今起こっていることはすべて過去によって起こっている。過去のある部分は随行されてきたがある部分は去って行った。今起こっていることは、あなたの以前の活動のバランスだ。

 しかし、現実には今世のカルマはない。現実には以前にあなたは何をしたか誰も知らない。ウパニシャッドの話を信じるなら一つの適切な話がある。


 昔、聖人がモスリムの村の近くの森に静かに生活していた。ある日、牛が聖人の小屋に走り込んできた。二・三分後に男がやってきて、聖人に男が殺すつもりでいた牛を見たかどうか尋ねた。聖者は「はい」といって小屋から牛を押し出して屠殺者に引き渡した。
これが起こっていることで、それはただ起こった。

 

 聖人は他に何も罪を犯さなかったので、来世でもまた聖人になった。彼はクリシュナの美しい像が祀られているマハラシュトラ州のパンダプアの村に行くことに決めた。

 途中寺院より10Kmの所で大嵐に遭って、どちらに行って良いものか分からなくなってしまった。近くに住んでいる男が彼を招待して一晩泊まって明日寺院に出かけるようにと言った。聖人はこの慈悲にみちた寛大な申し入れに同意した。

 この男はかなり年をとっていたが、非常に美しい若い妻を持っていた。この若い妻はすぐにこの純粋な聖人に恋をして、彼と一緒にここを逃げ出したいと彼を誘惑した。

 

 「それはいけません。私は出家者で女性には決して触れることはできないからです。」

 「でも、私はあなたに恋をしてしまったのです。どうか一緒に逃げて下さい。私の金の装飾品を集めました。これで十分私達は生活していけます。」と彼女は言った。

 「いけません。私はあなたと一緒にいることはできません。」と若い聖人は言った。

 「私はクリシュナ神に会いに行く途中で、あなたはすでに結婚しています。あなたが行ってしまったら、あなたのご主人は苦しむに違いありません。」


 

 それで彼女は夫を殺して井戸の中に投げ込んだ。そして彼女は言った。

「さあ、私には夫はありません。私と一緒に来て下さい。」

 

 聖人は驚いて、彼女を完全に拒否した。そうするとこの女は道に飛び出して、「この男が私の夫を殺して、金のすべてを盗もうとしている」と泣き叫びだした。

 人々や警官がやってきて、聖人は判事に連れて行かれた。女はこの見知らぬ男について彼女の話を村の判事に告げた。判事は当惑してしまった。犯罪が犯されたので判事は裁決を下さねばならないが、証人がいないので死刑を宣告することはできない。それで、無罪の若い聖人の手を切り取ることを命じた。


 

 そうして聖人はクリシュナ寺院へと旅を続けた。寺院でクリシュナ神が彼の前に現れて言った。

 

「何か頼み事があるかね?」 

 

 聖人は言った、

 

 「私はいつもあなたを愛して、いつもあなたを礼拝してきました。私はあなたの名前以外口にしたことはありませんし、私の手はどんな犯罪も犯したことはありません。この手は、あなたを讃えるために、礼拝するためにありました。神様、もしあなたが寛大ならあなたを礼拝していたこの手がどうして切り落とされたのか教えて下さい。」

 

 神は答えて、

 

 「あなたの前にある*1ディーヴァダルシャンを見て、前世で何が起こったか知りなさい。」

 

 聖人は前世での、牛・屠殺者・聖人の話を見た。そして、今世で牛が妻で、屠殺者が夫で、彼が聖人だと分かった。牛は自分を殺した夫に復讐しなければならなかった。

 その因果応報は今終わった。彼の手が切られたのは、助けを求めて彼の所にやってきた牛を小屋から押し出したためだ。


 

 だから、カルマが今生に出現したのだ。今生で起こっていることの根源は誰も知らない。私達は、今起こっていることを見ているだけだ。

 カルマのすべては経験させられるに違いない。だから、何がなされるべきか知っている人に降伏することだ。

 

 

 

Q:それでは、私達の過去生から学ぶことができるのですか?
  

 

 人間としての誕生は滅多にないことで貴重なものだ。それを無駄にすることはできないということを学びなさい。何億年も通じて8・4億の生物種を生まれ変わって、やっと人間になった、悟りが最も可能な人間になったのだ。
  


 

Q:過去生療法は、役に立ちますか?
  

 

 この療法では、現在の心理的障害を引き起こしている明確な原因である過去のある出来事に連れて行かれる。私はこれを拒否しないが、ここでは、過去に行かないようにと言っている。

 マインドは過去だ、それと一緒に過去に行くべきではない。その代わりに、過去の影響が弱い現在にマインドを連れてくるべきだ。この今にいることがサットサンガだ。
  


 

Q:生まれかわると言うことを理解することはできません、何が生まれかわって来るのですか?
  

 

 このあなたの現在の生まれかわりはどの木の根からでた枝かを、あなた自身で知らない限り、どんな答えもあなたを満足させることはない。生まれかわって来るものは満たされなかった思考や欲望だ。これを避けることはできない。

 思考がないならあなたは自由だ。さもないと欲望を満たすために、何度も何度も生まれかわらなければならない。欲望がその欲望を満たすのを助けてくれる人の子宮に受胎するのだ。

 

 

Q:歴史の観点から、あなたは人類の精神性に対するビジョンを持っていますか?
  

 

 私にはビジョンや観点はないが、信頼がある。私はこの人類の精神的進化は歴史ではなく神秘として信頼している。それを神秘だと見ない限りグルとして教えることはできない。

 歴史として考えるなら、それは神秘ではない。それを理解することはできない。神秘は非常に神秘的で秘め事だ。それはまさに秘密で神聖だ。

 

 

Q:西洋人には特殊な役割があるのですか?
  

 

 確かに西洋人には明確な役割がある。そして、彼らは最善を尽くしてその役割を演じている。インドで何千年もの間教えられたことはインドの人々によってもはや望まれていない。インドの人々は西洋の物が欲しい。だから彼らは欲望を満たすために西洋に行くのだ。

 精神的欲望は真理を悟りたい精神的な人々によって満たされる。だから、自由への欲望自体も西洋に行ってしまった。これが西洋人がここにいる理由だ。彼らは何が美か知っている。彼らは物理的美しさのすべてを知ったが、その美しさに欺かれて後から蹴飛ばされた。

 さて今、彼らは彼らの背中を蹴られるためではなく、彼らを抱擁してくれる美しさを求めてここにいるのだ。

 

 

 

Q:パパジ、どのようにしてこの幻想の中で存在したらよいのでしょうか。どのようにして幻想の中で、巧みに苦しみの罠にかからないように生きて行くことができますか?
  

 

 

 あなたは誰か忘れないことだ! 私達は完全にその仕事を終えていないからこの世に生きているのだ。あなた自身を知りなさい。
 

 

 

 

 

 

 

 

 

第9章「世界は幻想」終了

 

 

用語解説 

 

*1ディーヴァダルシャン 神の視界

 

 

 

 

 

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